この記事ではFMEA(Failure Mode and Effects Analisys, 故障モード影響解析)について解説します。
製造業でよく聞く信頼性設計の手法だということは知っていても具体的なやり方までは知らないという人もいるのではないでしょうか?
この記事では「FMEAとは何か」から具体的なやり方まで解説します。
FMEAとは
FMEAとは製品開発段階で製品の信頼性を設計する手法の一つです。
顧客の目線に立って製品の任務を定義し、製品の使い方を考える中で「こんな故障が起きないか?」ということを考え、影響度や発生頻度、検知度をランクで評価し、総合ランクが高いものは対策を講じるというものです。
次章以降で具体的なやり方を説明していきます。
Step1. 製品の任務を簡潔に定義する
ここからはボールペンを題材にFMEAの具体的なやり方を解説していきます。
Step1.では製品の任務を定義します。
ボールペンなら「チップを出し入れ可能で、出している間は紙に押し付けてペンを滑らせると線が書ける」というものになるかと思います。
※あくまで一例なのでこれ以外にも考えられます。
大事なのは顧客の目線に立って製品の任務を定義するということです。
なぜなら製品の信頼性は顧客に対して保証するものだからです。
顧客からしたら「この製品のこの部品がこうなってこうなる」という観点はどうでもいいのです。
製品の任務は顧客目線で簡潔に考える。
また任務を定義することは「メーカーはどこまで責任を負うか」を定めることでもあります。
よってあまり広く製品の任務を定義してしまうと過大な責任がメーカーに発生するので注意が必要です。
製品の任務はあまり広くしすぎないようにする。
Step2. 機能フロー図を作成する
製品の任務が定義出来たら次に製品の機能フロー図というものを作ります。
機能フロー図とは製品を使用するときの機能をフロー図にしたものです。
ボールペンなら以下のようになります。
上の機能フロー図はかなり単純なものです。
実際の製品では条件分岐やループなどを使って機能フロー図を作ります。
ここらへんはプログラミングのフローチャートと同じように作ればいいでしょう。
また上の図では開始点と終点がありますが、必ずしも設ける必要はありません。
製品によってはループを延々と繰り返すものもあるので開始点と終点が存在しない機能フロー図もありえます。
Step3. 信頼性ブロック図を作る
機能フロー図を作成出来たら信頼性ブロック図というものを作成します。
信頼性ブロック図とは製品の各機能がどの部品で担われているのかを整理したものです。
ボールペンなら以下のようになります。
この信頼性ブロック図は特に決まった作り方というものはありません。
製品の機能に対してそれに関係する部品が網羅されていればオーケーです。
これで製品の機能とそれに関係する部品が列挙できました。
Step4. 機能フロー図の各機能において想定される故障モードを挙げる
いよいよ各機能における故障モードを挙げていきます。
以下のような表を作って各機能の故障モードを整理していきます。
FMEAは基本的にチームで行いますが、ここではとにかく思いついたらどんどん意見を言いましょう。
そのためにはブレインストーミング形式で故障モードを挙げるのがおすすめです。
また「まず起きないだろう」と思われる故障も挙げておきましょう。
Step.5 可能原因を挙げる
次にそれぞれの故障モードに対して可能原因を挙げます。
可能原因とはありえる原因のことです。
ここでも故障モードと同じく考えられる原因をすべて挙げましょう。
Step6. 影響度・発生頻度・事前検知度を10段階で評価する
ここまで来たら影響度・発生頻度・事前検知度をそれぞれ10段階で評価します。
そして(総合的な重大性)=(影響度)×(発生頻度)×(事前検知度)として算出します。
影響度はある故障モードにおいて「それが発生したらどのくらいの被害を顧客に与えるか」を表す指標です。重大な被害を与えると考えられるものには高ランクを付けます。
1~10段階で評価しますが、それぞれのランクがどれくらいの被害なのかはあらかじめ決めておきます。
影響度はある故障モードが発生した時の被害を表す。
発生頻度はある可能原因において「それが発生する頻度はどのくらいか」を表した指標です。
発生する頻度が多いほど高いランクを付けます。
影響度と同じく1~10段階で評価し、各ランクがどれくらいの発生頻度なのかはあらかじめ決めておきます。
発生頻度はある可能原因がどれくらいの頻度で発生するかを表す。
事前検知度はある可能原因がどれくらい事前に検知しやすいかを表す指標です。
事前に検知することが難しいほど高ランクになります。
それ以外は影響度と同じです。
事前検知度はある可能原因が事前に検知しやすいかを表す。
注意したいのは影響度は故障モードを評価するもので、残りの二つは可能原因を評価するものということです。たまに同じ故障モードなのに影響度が違うということがあります。影響度を可能原因で評価したためですが、これは間違っています。同じ故障モードなら影響度は必ず同じです。
もう一つ注意したいのは最低ランクを0にしてはいけないということです。
(総合的な重大性)=(影響度)×(発生頻度)×(事前検知度)なのでどれか一つの指標が0になると総合的な重大性が0になってしまいます。
ランクは1~x段階で評価する。
※xは任意に設定可能
ちなみになぜ総合的な重大性が3つの指標の積であらわされるかというと足し算にしてしまうとある指標が10で残りの二つが1といった場合に総合的な重大性が過少に評価されてしまうからです。
Step7. 対策を検討して重大性を再評価する
ここまでくればあと一息です。
それぞれの重大性を下げるように対策を講じます。
まずは対策が必要な重大性の基準を決めます。
例えば総合的な重大性が100以上のものは対策を講じ、そうでないものは放置するという感じです。
すべての重大性に対して対策を講じるのはやめましょう。
恐ろしい時間とコストがかかるからです。
対策を定める基準を決めておく。
基準を決めたら基準を上回るものに対して具体的な対策を考えて影響度、発生頻度、事前検知度を再評価します。
対策を考える際のポイントは3つの指標(影響度、発生頻度、事前検知度)のうちランクが高いものに対してアプローチするということです。基本的にランクが高いもののほうが低いものより対策が簡単です。
例えば影響度が10、発生頻度が2だったとしましょう。
重大性を半分にしたかったら発生頻度を2→1にするよりも影響度を10→5にするほうが簡単だということです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
「FMEAとは何か」から具体的なやり方まで説明してみました。
この記事で説明したやり方はあくまで基本的なやり方でこの通りにやる必要は必ずしもないということです。それぞれの状況に応じてやり方を柔軟に変えるのが大事です。
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