図面を描く際に直列寸法にするか並列寸法にするかはなかなか悩ましいものです。
図面の教科書を見ても情報が混在しているので自分の整理がてらこの記事で解説してみようと思います。
この記事では穴の相対的な位置が重要な部品の図面において穴の位置の寸法は直列寸法で記入するべきかそれとも並列寸法で記入するべきかについて解説します。
問題設定
以下のように板に穴が複数開いていてそれらの相対的な位置が重要な場合、例えばほかの部品に組み付くなどの場合を考えます。
このような穴の位置を図面で指示する際に直列寸法で記入するべきかそれとも並列寸法で記入するべきかというのが今回の問題設定です。
±は公差を表し、普通公差を適用するものとします。
相対的な位置が重要な場合は直列寸法で記入するべき
結論から言ってしまうと特別な事情がない限りこのような場合は直列寸法で記入するべきです。
なぜかというと、直列寸法のほうが並列寸法よりも部品の機能を満たす度合いが高いからです。
詳しく解説すると
・並列寸法では以下のように穴の相対的な位置の公差が±(a+b’)となる
・一般に寸法が大きくなるほど公差は大きくなるのでb<b’が成り立つ
上記2点よりb<a+b’が成り立ちます。
b<a+b’なので穴の相対的な位置のばらつきは直列寸法のほうが小さく、並列寸法より直列寸法のほうが部品の機能を満たす度合いが高いということになるのです。
(補足)
一般に寸法が大きくなるほど公差は大きくなります。
JIS B0405より長さに対する許容差を抜粋します。
寸法とともに公差が大きくなっていることがわかります。
記号 | 説明 | 0.5以上3以下 | 3を超え6以下 | 6を超え30以下 | 30を超え120以下 | 120を超え400以下 | 400を超え1000以下 | 1000を超え2000以下 | 2000を超え4000以下 |
f | 精級 | ±0.05 | ±0.05 | ±0.1 | ±0.15 | ±0.2 | ±0.3 | ±0.5 | – |
m | 中級 | ±0.1 | ±0.1 | ±0.2 | ±0.3 | ±0.5 | ±0.8 | ±1.2 | ±2 |
c | 粗級 | ±0.2 | ±0.3 | ±0.5 | ±0.8 | ±1.2 | ±2 | ±3 | ±4 |
v | 極粗級 | – | ±0.5 | ±1 | ±1.5 | ±2.5 | ±4 | ±6 | ±8 |
作業者がやりやすいように並列寸法で記入するべき?
「作業者がやりやすいように並列寸法で記入するべき」という考え方もあります。
たしかに並列寸法の場合、基準面からの寸法を記入するので同寸法の計算が不要になり、作業者がやりやすくなります。
(直列寸法だと作業者が基準面からの寸法をA+Bで計算しなければならないので面倒くさい)
しかしそんなことよりも重要なのは部品がその機能を満たす度合いです。
作業者に配慮するあまり、部品の機能を満たす度合いが下がるのは本末転倒です。
よって今回の場合は直列寸法で記入するべきです。
まとめ
重要なのは設計者の意図を図面に込めることです。
場面に応じて最適な寸法表記方法を使いましょう。
コメント