工程能力指数Cp(Cpk)とは?不良率を推定する方法まで解説

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この記事では工程能力指数\({\rm Cp(Cpk)}\)とは何かについて解説します。

この記事を読めば工程能力指数の意味が分かります。

また工程能力指数から不良率を推定する方法についてもわかります。

工程能力指数とは

工程能力指数\({\rm Cp}\)とは製造ラインが、部品を許容範囲内に収めて生産する能力を数値化したものです。

値が大きければ大きいほど許容範囲内に収める能力が高いことを示します。

\({\rm Cp}\)は部品の許容範囲である(規格上限値)ー(規格下限値)とその製造ラインで作られる部品の標準偏差\(\sigma\)の比で表されます。

数式だと以下のようになります。

$${\rm Cp}=\frac{S_U-S_L}{6\sigma}$$

\({\rm Cp}\):工程能力指数
\(S_U\):規格上限値
\(S_L\):規格下限値
\(\sigma\):標準偏差

工程能力指数の意味

工程能力指数は許容範囲に収めて部品を作る製造ラインの能力を表します。

部品の分布が正規分布の場合でくわしく考えてみます。

工程能力指数は許容範囲と標準偏差の比なので、製造側が設定した許容範囲\(S_U-S_L\)に対して部品のばらつき\(\sigma\)が小さければ小さいほど値が大きくなります。

\(\sigma\)が小さいと正規分布のグラフは中央に尖った形状になります。
ある\(S_U-S_L\)に対してグラフが中央に尖ると下図のように\(S_U-S_L\)の範囲に入る部品の割合が増える(=不良品が少なくなる)ので、許容範囲内に収めて部品を作る能力が高いということになります。

一般に\({\rm Cp}\ge1.33\)であれば十分な能力を持っているとみなされることが多いようです。

工程能力指数は許容範囲に収めて部品を作る製造ラインの能力を数値化したもの

不良率はCpから推定できる

不良率は\({\rm Cp}\)から推定することができます。
以下で手順を説明します。

まず標準正規分布における規格上限値\({\rm K\epsilon}\)を求めます。

\({\rm K\epsilon}\)は、正規分布\(N(\mu,\sigma^2)\)を標準正規分布\(N(0,1^2)\)に規準化したときの規格上限値です(下の絵)。

式で表すと

$${\rm K\epsilon}=\frac{S_U-\mu}{\sigma}$$

となりますが、\(\mu=\frac{S_U+S_L}{2}\)のとき(平均値が許容範囲のちょうど真ん中にあるとき)

$${\rm K\epsilon}=3{\rm Cp}$$

が成り立ちます(証明は省略します)。上の式に\({\rm Cp}\)を代入すれば\({\rm K\epsilon}\)はすぐに求まります。
(ちなみに上の式を見ても\({\rm Cp}\)が大きければ不良率が低いというのがわかると思います。\({\rm Cp}\)に比例して規格上限値が大きくなるので。)

続いて、求めた\({\rm K\epsilon}\)を上回る不良品が発生する確率を求めます。
標準正規分布には正規分布表という、\({\rm K\epsilon}\)以上の領域に来る確率が一覧表になっているものがあります(下の表)。

正規分布表の1列目は\({\rm K\epsilon}\)の小数第1位までの値で、1行目は小数第2位の数値です。この表の1列目と1行目で、求めた\({\rm K\epsilon}\)に該当する部分を見ます。

たとえば\({\rm Cp}=0.7\)の場合、\({\rm K\epsilon}=3\times0.7=2.10\)になります。この規格上限値を上回る不良品の発生確率は上の表の1列目の2.1と1行目の0が交差する箇所を見ると0.01768となります。パーセンテージに直すと0.01786×100=1.786%になります。

標準正規分布は左右対称なので規格下限値を下回った場合の確率も考慮すると2倍して3.572%というのが\({\rm Cp}=0.7\)の場合の不良率になります。

不良率は工程能力指数から推定できる。

注意してほしいのはここまでの話は正規分布でかつ平均値が許容範囲のちょうど真ん中にある場合に成り立つ話だということです。
実際のラインでは平均値は真ん中からずれている場合がほとんどです。

平均値が真ん中からずれている場合はCpを使わないほうがいい

平均値が真ん中からずれている場合は\({\rm Cp}\)を使わないほうがいいです。

なぜなら平均値が真ん中からずれている場合に\({\rm Cp}\)を使って不良率を推定すると実際の不良率より小さくなってしまう場合があるからです(下図)。

上の絵では\(\mu\)が許容範囲の真ん中\(\frac{S_U+S_L}{2}\)から\(a\)だけずれています。

上の絵で\(N(\frac{S_U+S_L}{2},\sigma^2)\)と\(N(\mu,\sigma^2)\)を比べると\(N(\mu,\sigma^2)\)では下限規格を下回る不良品は減っていますが、上限規格を上回る不良品はそれよりも大幅に増えています(黄色の線で囲んだ部分)。

一方、\({\rm K\epsilon=3Cp}\)の式による不良率の推定では平均値が許容範囲の真ん中にある前提で不良率を推定するので\(N(\frac{S_U+S_L}{2},\sigma^2)\)で考えることになり、不良率を実際より小さく推定してしまいます(赤い線で囲んだ部分)。

安全サイドに寄せて考えることができていないのでこれはよくないです。

平均値が許容範囲の真ん中からずれている場合、(\({\rm Cp}\)で推定する不良率)<(実際の不良率)

平均値が真ん中からずれている場合はCpkを使う

平均値が真ん中からずれている場合には\({\rm Cp}\)ではなく\({\rm Cpk}\)を使います。

$${\rm Cpk}={\rm min}\left[\frac{S_U-\mu}{3\sigma},\frac{\mu-S_L}{3\sigma}\right]=(1-k){\rm Cp}$$

$$k=\frac{\left|\frac{S_U+S_L}{2}-\mu\right|}{\frac{S_U-S_L}{2}}$$

※\({\rm min}[a,b]\)は\(a\)と\(b\)のうち小さいほうを表します。
※一つ目の式の最後の等号が成り立つことの証明は省略します。

\({\rm Cp}\)と違い\(3\sigma\)で割るのは規格片側\(S_U-\mu\)(もしくは\(\mu-S_L\))で考えるので分母も\(6\sigma\)の半分の\(3\sigma\)で考えるためです。

なぜ平均値が真ん中からずれている場合に\({\rm Cpk}\)を使ったほうがいいかというと不良率を実際より大きく推定できるためです。

平均値が上側にずれている場合、\(S_U-\mu<\mu-S_L\)なので

$${\rm Cpk}=\frac{S_U-\mu}{3\sigma}=\frac{2\left(S_U-\mu\right)}{6\sigma}$$

となります。(下側にずれている場合は分子が\(2\left(\mu-S_L\right)\)になる)

これは\({\rm Cp}\)において分子を\(2\left(S_U-\mu\right)\)に変えただけです。

よって\({\rm Cp}\)と同様に\({\rm Cpk}\)による不良率の推定でも\({\rm K\epsilon}=3{\rm Cpk}\)を使うと考えると、以下の絵のように\(2\left(S_U-\mu\right)\)を許容範囲とする不良率を推定することになります。(平均値が上側にずれている場合。下側にずれている場合は\(2\left(\mu-S_L\right)\)。)

\({\rm Cpk}\)で考える不良品は実際の不良品よりも多いことがわかります。
よって安全サイドに寄せて考えることができます。

(実際の不良率)<(\({\rm Cpk}\)で推定する不良率)

以上をまとめると以下のようになります。

平均値が真ん中からずれている場合、(\({\rm Cp}\)で推定する不良率)<(実際の不良率)<(\({\rm Cpk}\)で推定する不良率)

(補足)

冒頭の式\({\rm Cpk}=\left(1-k\right){\rm Cp}\)を考えてみても(実際の不良率)<(\({\rm Cpk}\)で推定する不良率)が言えます。

まとめ

長くなったのでまとめます。

・工程能力指数は、許容範囲に収めて部品を作る製造ラインの能力を数値化したもの
・不良率は工程能力指数から推定できる。
・平均値が真ん中からずれている場合は、\({\rm Cp}\)ではなく\({\rm Cpk}\)で不良率を推定したほうが安全サイドに寄せて不良率を推定することができる。

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