この記事では減圧弁の流量特性をよくする方法を解説します。
また減圧弁にはたらく力についても解説するので減圧弁の仕組みをより深く理解できるようになります。
なお、減圧弁の基本的な機能・仕組みについては以下の記事を参照ください。
減圧弁の流量特性が何かについては以下の記事を参考にしてください。
結論
結論から言うと減圧弁の流量特性をよくするためには、弁の下部に接続されたばね\(w\)のばね定数を小さくしてやればいいです。
また圧力特性をよくするためには、弁の面積\(A_{v2}\)に対してダイヤフラム面積\(A_d\)を大きくすればいいです。
記号の定義
詳細な説明のために以下のように記号を定義します。
\(W\):調節ばねによる力
\(A_d\):ダイヤフラム面積
\(P_2\):二次圧
\(N\):弁が筐体から受ける垂直抗力
\(N’\):弁がダイヤフラムから受ける垂直抗力
\(A_{v1}\):一次側弁面積
\(A_{v2}\):二次側弁面積
\(w\):ばねによる力
\(P_1\):一次圧
\(P_a\):大気圧
\(x\):弁の変位
バランス時の力のつり合い
以下のように弁が給気も排気もせずに静止している状態を仮にバランス状態と呼ぶことにします。
このときのダイヤフラムと弁の力のつり合いの式はそれぞれ
$$P_aA_d+W=P_2A_d+N’$$
$$N’+P_2A_{v2}+N=P_1A_{v1}+w$$
となります。
ただし、排気されていないので\(N’>0\)です。
よってダイヤフラムのつり合いの式より
$$(P_2-P_a)A_d<W$$
が成り立ちます。
これはゲージ圧で見た2次圧の力が調節ばねの力よりも小さいことを意味します。
給気時の力のつり合い
バランス状態の式が導けたら給気時の式も導けたようなものです。
下の絵からわかるように、バランス状態の弁のつり合いの式で\(N=0\)とすればいいだけだからです:
$$P_aA_d+W=P_2A_d+N’$$
$$N’+P_2A_{v2}=P_1A_{v1}+w$$
バランス状態と同様にダイヤフラムは開いていないので\(N’>0\)となり
$$(P_2-P_a)A_d<W$$
となります。
排気時の力のつり合い
排気時の式はバランス状態のダイヤフラムの式で\(N’=0\)とすればいいだけです。
$$P_aA_d+W=P_2A_d$$
$$P_2A_{v2}+N=P_1A_{v1}+w$$
流量特性をよくするには
流量特性をよくするにはばね定数を小さくすればいいです。
流量特性は、弁が開いているときの特性なので給気時の力のつり合いの式で考えます:
$$P_aA_d+W=P_2A_d+N’$$
$$N’+P_2A_{v2}=P_1A_{v1}+w$$
\(N’\)を消去して整理すると
$$(P_2-P_a)A_d-W-P_2A_{v2}+P_1A_{v1}+w=0$$
となります。両辺を弁の変位\(x\)で微分して整理すると
$$\frac{dP_2}{dx}=\frac{1}{A_d-A_{v2}}\left(\frac{dW}{dx}-\frac{dw}{dx}\right) \tag{1}$$
となります。
「流量特性が優れている」=「弁の開度が変化しても2次圧力が設定圧から変化しない」なので流量特性が優れているというのは以下の流量特性のグラフで曲線の傾きが小さい、すなわち(1)式で\(\frac{dP_2}{dx}\)が0に近いということになります。
※流量特性のグラフでは横軸は流量ですが、流量は\(x\)とともに単調増加すると考え、\(x\)で置き換えることが可能です。
\(\frac{dW}{dx}<0,-\frac{dw}{dx}>0\)なので\(\frac{dP_2}{dx}\)が0に近いということは\(\frac{dW}{dx}\)と\(\frac{dw}{dx}\)がともに0に近いということになります。
よって\(W\)のばね定数\(\frac{dW}{dx}\)もしくは\(w\)のばね定数\(\frac{dw}{dx}\)を小さくすれば流量特性を向上させることができます。
流量特性を良くするにはばね定数を小さくすればいい
またこれは定性的にも理解可能です。
ばね定数が小さいということはばねがやわらかいということなのでバランス状態から2次圧がほんの少し上昇しただけで弁が大きく開きます。
ということはそれだけたくさん給気されて2次圧の降下が抑えられることになります。
圧力特性をよくするには
圧力特性をよくするには弁の面積に対してダイヤフラムの面積を大きくすればいいです。
バランス式より以下が成り立ちます:
$$P_2=\frac{1}{A_d-A_{v2}}\left(P_aA_d+W-P_1A_{v1}-w\right)$$
上式より\(P_1\)が下がると\(P_2\)は上昇することがわかります(下のグラフの黒い線)。
※ここでは話を簡単にするために黒い線は曲線ではなく直線だと考えてください。
この直線の傾きは\(\frac{-A_{v1}}{A_d-A_{v2}}\)です。
よって\(\frac{-A_{v1}}{A_d-A_{v2}}\)が0に近いほど圧力特性は理想的な減圧弁のものに近づくはずです。
\(\frac{-A_{v1}}{A_d-A_{v2}}\)は
$$\frac{-A_{v1}}{A_d-A_{v2}}=\frac{-\frac{A_{v1}}{A_{v2}}}{\frac{A_d}{A_{v2}}-1}\approx\frac{-1}{\frac{A_d}{A_{v2}}-1}$$
と式変形できます。
※最後の変形では\(A_{v1}\approx A_{v2}\)としました。
これを0に近づけるには分母を大きくすればいいです。
すなわち\(A_{v2}\)に対して\(A_d\)を大きくすればいいです。
圧力特性をよくするには弁の面積に対してダイヤフラムの面積を大きくすればいい
まとめ
今回は減圧弁の流量特性と圧力特性を力学的に解説してみました。
まとめると
流量特性を良くするにはばね定数を小さくすればいい
圧力特性をよくするには弁の面積に対してダイヤフラムの面積を大きくすればいい
となります。
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