こんにちは。
磁気回路法で回路を作ったはいいけど複雑な回路だとオームの法則を適用して方程式を作るのも面倒だったりしますよね。
系統的にオームの法則を適用して方程式を作る手法があると非常に楽です。
そんな方法の一つに電気回路で使われる閉路解析という手法があります。
この手法を知っていれば磁気回路法で作った回路で簡単に方程式を作ることができてかつ簡単に解けるようになります。
閉路解析法とは
閉路解析法とは電気回路で用いられている手法で、オームの法則による回路の方程式を系統的に作成することができるものです。
磁気回路法は磁気製品を電気回路に見立てるので閉路解析も使えます。
閉路解析法のやり方
たとえば磁気製品を磁気回路法でモデル化して以下のような回路になったとします。
\(F_1\)はコイルなどの起磁力で、\(R_1\)~\(R_6\)は磁気抵抗です。
これくらいの回路なら方程式を立てるのも簡単かもしれませんが、実務ではもっと複雑な回路を扱ったりします。今回は簡単のためにこのような単純な回路とします。
Step1. 回路を構成するそれぞれのループを流れる仮の磁束を記号で置く
まず回路を構成するそれぞれのループに流れる仮の磁束を記号で置きます。
ここではループが3つあるのでそれぞれ\(\Psi_1\)、\(\Psi_2\)、\(\Psi_3\)とします。
ここで注意点はループの向きは必ず時計回りで統一するということです。
Step2. 抵抗を並べた行列Rをつくる
Step2. では抵抗を並べた行列\(R\)をつくります。
まず対角成分の数がループの数に等しいような正方行列を作り、一定のルールに従って
\(R\)の各要素を埋めていきます。
1番目の対角成分には\(\Psi_1\)が通るループに含まれる抵抗の総和を入れます。
2番目には同じく\(\Psi_2\)のループに含まれる抵抗の総和を入れ・・・というのを最後の対角成分まで繰り返します。
非対角成分\((i,j)\)にはループiとjが共有する抵抗の総和にマイナスを掛けたものを入れます。
たとえば(1,2)成分にはループ1とループ2が共有する抵抗にマイナスを掛けた\(-R_2\)を入れます。
(2,1)成分も同様にループ2とループ1が共有する抵抗にマイナスを掛けた\(-R_2\)を入れます。
共有する磁気抵抗がない場合は0を入れます。
$$
R = \left(
\begin{array}{ccc}
R_1+R_2+R_3 & -R_2 & -R_3 \\
-R_2 & R_4+R_5 & 0 \\
-R_3 & 0 & R_3+R_6
\end{array}
\right)
$$
これで\(R\)が完成です。
Step3. 仮の磁束を並べたベクトルを作る
各ループを流れる仮の磁束を並べたベクトル\(\Psi\)を作ります。
ベクトルの第i成分には\(\Psi_i\)を入れます。
$$
\Psi=\left(
\begin{array}{rrr}
\Psi_1 \\ \Psi_2 \\ \Psi_3
\end{array}
\right)
$$
Step4. 起磁力を並べたベクトルを作る
各ループに含まれる起磁力を並べたベクトル\(F\)を作ります。
\(F\)の第i成分にはループiの起磁力が入ります。
\(F_i\)の向きがループと同じ向きならそのまま、逆向きならマイナスをかけたものを入れます。
ループに起磁力が含まれなければ0を入れます。
$$
F=\left(
\begin{array}{rrr}
F_1 \\ 0 \\ 0
\end{array}
\right)
$$
Step4. 回路方程式を作って解く。
これまでに作った\(R,\Psi,F,\)で以下のような連立方程式が成り立つのでこれを解きます。
$$R\Psi=F\\
\rightarrow\Psi=R^{-1}F$$
逆行列\(R^{-1}\)を求めるにはたとえばExcelならシート関数MINVERSEを使えばいいです。
右辺の行列の掛け算\(R^{-1}F\)はExcelではMMULTという関数で計算できます。
これで\(\Psi\)が求まりました。
Step5. 仮の磁束から真の磁束を算出する。
最後に、求めた\(\Psi\)から真の磁束\(\phi\)を求めます。
具体的には、ループが重なっているところで\(\Psi_i\)を重ね合わせます。
たとえばループ1とループ2が重なっている抵抗\(R_3\)を流れる真の磁束を\(\phi_3\)とすると\(\phi_3=\Psi_1+\Psi_2\)となります。
ループが重なっていないところでは\(\Psi_i\)そのものが真の磁束\(\phi\)になります。
ただし注意点として\(\Psi_i\)の値がマイナスの場合、\(\Psi_i\)の向きはStep1.で仮定したループの向き(時計回り)とは逆向きで考えなければならないということです。
たとえば\(\Psi_2<0\)だった場合、\(\Psi_2\)の向きは反時計回りになります。
以上のことに注意しながら各場所で真の磁束\(\phi_i\)を求めていけばすべての場所の磁束が求まります。
まとめ
閉路解析を使えば複雑な回路でも系統的に回路方程式を作れます。
便利なので実務で使えます。
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